「ぷる博」のイベント取材記者となって、若者の視点で紀の川市の魅力を発信してくれました【紀の川フルーツ・ツーリズム】
日本各地の大学生と和歌山県内各地域の団体・個人をつなぐ、地域体験マッチングアプリ「わかやまCREW」。2021年10月の開始以来、多くの大学生の方々にご利用いただき、キャンパスでは体験できない地域の学びと出会いを届けています。
掲載無料かつ気軽に体験情報のページを作成できるため、多くの事業主やイベント主催者の方々に「わかやまCREW」を知っていただき、大学生と地域との接点をさらに広げたい。その思いから、過去に受け入れ先となった方々に体験談をインタビューしています。
今回は、和歌山県紀の川市にある一般社団法人 紀の川フルーツ・ツーリズムで理事を務める西峰 祐美さんに掲載に至った経緯や率直な感想を伺いました。
紀の川市を舞台に「ぷる博」を毎年開催するチームが
「わかやまCREW」に掲載したきっかけは?
年間を通じてさまざまなフルーツが味わえることで有名なフルーツ王国・紀の川市。 紀の川フルーツ・ツーリズムは、まさにそのフルーツをテーマに、産学官連携のもと紀の川市民一体となって行っているまちおこしのチームです。2014年に研究会・協議会として立ち上げ、2016年に一般社団法人化し、現在に至っています。
活動の目的は、農業活性化のみならず、フルーツを通じて多くの人々に笑顔を届けることで、紀の川市の魅力を広く発信すること。そのため、フルーツについて学び味わう茶会や、収穫・手づくり体験などのワークショップを月に1度開催してきました。
ワークショップの様子。多い時は200名近くが参加することもあったそうです
それらの活動をきっかけに、2016年に誕生したイベントが「ぷる博」。紀の川市のフルーツをテーマにした体験型の博覧会です。フルーツを育てる農家や、フルーツを用いた加工会社や飲食店、紀の川市民などが携わり、飲食や物販、調理・クラフト・アクティビティといった体験など、五感でフルーツの魅力を感じる40種類以上のコンテンツを毎年提供しています。
「私たちは『ぷる博』の運営に携わる方々を『仕掛け人』と呼んでいるのですが、その人数は50名ほどです。紀の川市内にある農園・工房・飲食店など複数のスポットを会場として、農家さんの収穫期をなるべく避け、毎年2月下旬から4月上旬頃に開催しています。『わかやまCREW』に掲載したのは、第7回となる2023年の開催時でしたね」
2023年に開催された「ぷる博」の集合場所マップ
どのような経緯で「わかやまCREW」を知ったのでしょうか。西峰さんによると、和歌山県が運営するサイト「わかやま しごと・暮らし体験(※)」への掲載がきっかけだったそうです。
「『わかやま しごと・暮らし体験』でお世話になるなかで、大学生を対象とした『わかやまCREW』もありますよと県の方に教えてもらいました。現在の『ぷる博』の参加者は、紀の川市在住の60代が最も多く、回を重ねるごとに参加者の方々も年を取り、年齢層が上がりつつあります。そこで、若い人の視点で『ぷる博』をアピールしてもらえたらいいなと、『わかやまCREW』に掲載して『ぷる博』の取材記者を募集することにしたんです」
※「わかやま しごと・暮らし体験」では、移住希望者に向けて起業・就農・就労の体験プログラムを紹介しており、ユーザーの平均年齢は30代半ばです。
春の訪れと共に「ぷる博」が開幕。あら川の桃農家と桃畑を散策するアクティビティの様子
オンラインの書き方講座で足並みを揃えつつ
大学生が記者となって仕掛け人をインタビュー
約1ヶ月半にわたる「ぷる博」の開催期間中、「わかやまCREW」を通じて合計3名の大学生が参加しました。1人目は、自分の知らない和歌山を発見したいと考える和歌山県在住の女子学生。2人目は、地方創生の活動に興味がある東京在住の男子学生。3人目は、障害者のコミュニティづくりについて学んでいる神奈川県在住の女子学生でした。
取材は各自2日がかり。西峰さんが車で1日3〜4箇所の会場をアテンドし、学生が仕掛け人を取材して、帰宅後に1週間ほどかけて7〜8本の記事を仕上げるといった流れです。
実際の取材の様子。フルーツの木を削ってスプーンをつくるウッドワーク体験の仕掛け人をインタビュー
仕掛け人の話を聞くだけでなく、学生もスプーンづくりを体験
情報の掲載先は、紀の川フルーツ・ツーリズムが管理するSNSやメルマガ、公式サイトでの公開も予定しているようですが、記事の書き方はどのように指導したのでしょうか。
「和歌山市在住のライターさんにお願いして、事前にオンラインで書き方の講座を開いてもらったんです。運営メンバーや仕掛け人も一緒に、みんなでプロから基礎を教わりました。また、現地入りする前に学生さんの希望をふまえて取材先候補をある程度決め、参考資料を渡して事前準備ができるようにもしました」
甘夏みかんの収穫体験の様子。学生の希望を受けて取材先に選定された会場の1つです
若者ならではの視点で見つかる関心や感動のポイント
教えるだけでなく、撮影のコツを教わることも
西峰さんは各会場に学生をアテンドするなかで、仕掛け人と学生をつなぐだけでなく、会場の会話の輪に学生が入るきっかけをつくったり、移動中の車内で振り返りをして情報を整理する手助けをしたりと、細やかなフォローを心掛けていたそうです。
さらに、学生から提出される記事は、公開前に必ずチェック。一人一人の個性を大事にするため構成や表現はなるべくそのまま活かし、誤字脱字の訂正や、仕掛け人への確認が必要そうな情報については西峰さんが仕掛け人に尋ねるなどしていました。
自然薯茶屋からびなのフルーツを使った和風懐石。取材を兼ねて学生とランチタイム
こう聞くとフォロー役はなかなか大変そうですが、昨年までの「ぷる博」では多忙な運営メンバーが各自の仕事の合間を縫ってなんとかSNSに情報をアップしていたため、自分で書くより断然ありがたい!と西峰さん。さらに、若者ならではの視点も新鮮だったと話します。
「学生さんの記事は、私が想像していた視点とは全く違うポイントに関心や感動を見つけて書かれていたので、そこに興味が湧くのか!と度々驚かされました。また、スマフォの機能を使いこなして『このモードに切り替えて背景をぼかすと臨場感が出る』や『お箸で持ち上げると美味しそうに撮れる』などと教えてくれたりもしたんですよ」
「ぷる博」で話題となっている力寿しのフルーツ寿司。学生のアドバイスを受けて西峰さんが撮影
取材を介して、紀の川市を好きになる人が増え
アンテナとなって地域の魅力を発信してくれる
今回「わかやまCREW」にイベントの取材記者を募集する形で掲載しましたが、取材する側の学生と取材される側の仕掛け人は、どういった感想を持っていたのでしょうか。
「和歌山の学生さんは地元の印象が変わったと喜んでくれて、その後も農家さんとつながりが続いているみたいです。関東から来た学生さんたちは今回初めて和歌山に来たそうですが『また来たい!』と言ってくれました。地方創生や障害者福祉など、それぞれ関心のあるテーマに沿いながら取材先を決めたことが良かったのかもしれません」
ジェラート店・藤桃庵で和歌山オリジナル品種「まりひめ」のパフェを食べ、学生が歓喜していたそう
「若い人が会場に来てくれたことで場が華やかになり、仕掛け人さんたちも、いつも以上に表情がイキイキしていました。慣れない取材に一生懸命に励む学生さんを見て、自分の子どもや孫の姿と重なるのか、親切に接してくれる仕掛け人さんが多かったですね」
最後に、その双方をつなぐ役目を果たした西峰さんの感想を伺いました。
「私たち紀の川フルーツ・ツーリズムは、フルーツを使った着地型観光を通じて、紀の川市を好きになるきっかけを提供したいと思っています。学生さんのなかには、大学の友人たちに今回の体験について話し、すごく羨ましがられたと誇らしげに教えてくれた子もいました。『わかやまCREW』を介して、この地域を好きになる若者が増え、その人がまた別の人に向けて地域の魅力を発信してくれる。そのつながりができたことが嬉しいです」
心から感動した実体験ほど他者に伝わるものはありません。学生たちの感動は、オンライン上だけでなく、今後も生きるアンテナとなって多くの人々に伝わっていくことでしょう。
「ぷる博」のアクティビティの1つ、パラグライダー。学生たちの感動も風に乗って大空へ羽ばたきます